マイクロソフトがニュージーランド政府と協力し機械翻訳にマオリ語を加える
機械翻訳が便利なことは誰でもわかるし、誰でも体験できる。しかし、この実用アプリケーションは、テクノロジーがもたらす価値のほんの一部にすぎない。Microsoft(マイクロソフト)とニュージーランド政府は、マオリ語を保存し、できればそれに新しい命を吹き込むために、機械翻訳が役に立つことを示そうとしている。
Te reo Māori(テ・レオ・マーオリ、マオリ語)は、ニュージーランド最大の原住民コミュニティの言語だ。しかしどこでもそうだが、マオリも何世代にもわたって植民者の優勢な文化に同化していくにつれて、言葉も次第に忘れ去られようとしている。
マオリ族は人口の約15%を占めるが、マオリ語を話すのはその4分の1にすぎない。ニュージーランドの全人口の3%だ。国はマオリ語の教育を幅広く推進してこの傾向を逆転し、その適切な保存のための策を講じようとしている。
マイクロソフトとニュージーランドのマオリ語委員会であるTe Taura Whiri i te Reo Māoriが数年間協力して、同社のソフトウェアにこの消え行く言語が含まれるよう努めている。このパートナーシップの最新のイベントが、マイクロソフトの翻訳サービスへのマオリ語の導入だ。このサービスがサポートしているそのほかの60の言語とマオリ語との間で、互いに自動的な翻訳ができる。
自動翻訳は、コンテンツや仕事の理解を助け、また埋もれていたドキュメントを探究できるようにするから、インクルージョンと教育のための強力な力になる。
精確な翻訳モデルの作成は、どの言語でも難しい。そしてその鍵は、互いに比較できるコーパスをたくさん用意することだ。そこで開発の重要な、そして委員会が助けになる部分は、コーパスを集めて質のチェックを行い、正しい翻訳ができるようにすることだ。しかし、その言葉がわかる人が少ないと、フランス語とドイツ語の翻訳サービスを作ることなどに比べて作業はより困難になる。
この事業におけるマオリ語話者の一人、ワイカト大学(University of Waikato)のTe Taka Keegan(キーガン)氏は、マイクロソフトのブログ記事で以下のようにコメントしている。
このマオリ語ツールの開発は、長年共通の目標に向けて尽力した多くの人々なくしては不可能だったでしょう。私たちの仕事によって、ニュージーランドの未来の世代のためにマオリ語の再活性化と正規化がもたらされるだけでなく、マオリ語が世界中で共有され学ばれ、価値を認められるようになることを望みます。私たちが用いるテクノロジーが私たちの文化の伝統を反映強化し、そして言葉がその心になることが、極めて重要です。
今は世界の各地で、死にゆく言語が増えている。それをすべて防ぐことはできないにしても、テクノロジーがそれらの記録と使用を助けて、どんどん数が減っている現用言語と共存させていくことは可能だ。マオリ語翻訳事業は、マイクロソフトのAI for Cultural Heritage(文化の継承のためのAI)事業の一環だ。